トラブルを防ぐための相続分割の基本と対策
はじめに
「遺産の中身が土地しかない」
「兄弟で分けようにも、どうやって?」
相続の現場で非常に多く寄せられる悩みです。特に日本では不動産が相続財産の大半を占めることも少なくありません。
今回は、遺産としての不動産・土地の分け方、そしてトラブルを防ぐためのポイントを、行政書士の立場から解説します。
1. 遺産分割の基本とは?
相続が発生した際、まず行うべきは相続人の確定と遺産の把握です。
その上で「誰が・何を・どれだけ相続するか」を話し合うのが「遺産分割協議」です。
分割の方法は主に3つ:
方法 | 概要 |
---|---|
現物分割 | 土地・建物・預金などをそのまま分ける |
代償分割 | 1人が不動産を取得し、他の相続人にお金を支払う |
換価分割 | 不動産を売却して現金を分ける |
2. 不動産しかない場合の課題
たとえば、「地方にある土地と古家」が唯一の遺産という場合:
- 預貯金がなく、現物分割が困難
- 不動産の価値が高くて代償金の支払いが厳しい
- 売却しても買い手がつかない(地方・築古物件など)
といった問題が起こりやすくなります。
3. 実務で使われる3つの対処方法
① 不動産を1人が取得し、他の相続人に代償金を支払う(代償分割)
例:長男が実家を相続し、妹に300万円の代償金を支払う
→ 兄妹で公平感が出るが、資金調達の難しさがネック
② 売却して現金を分ける(換価分割)
例:土地建物を1,000万円で売却 → 相続人3人で均等に333万円ずつ分ける
→ 一番公平だが、買い手が見つからないことも
③ 共有名義にして様子を見る(※おすすめしない)
例:兄弟で2分の1ずつ登記
→ 管理や税金、将来の処分で争いが起きやすい
4. トラブルを避けるための工夫
- 専門家(行政書士・司法書士・税理士など)に早めに相談
- 固定資産税評価額や路線価を参考に「目安価値」を共有
- 将来の利用予定(住む、貸す、売るなど)を事前に確認
- 相続税の納税資金や名義変更費用も含めて話し合う
5. 生前の対策が最大のカギ
- 遺言書の作成(公正証書遺言が特に有効)
- 生前贈与や代償分割資金の準備
- 相続人間での事前協議
「遺言さえあれば揉めなかったのに…」というケースが本当に多く見られます。
おわりに
相続は、家族にとって一度きりの大きな出来事。
特に土地や建物だけが遺産という場合、話し合いをせずに放置してしまうと、「争族(そうぞく)」になってしまうことも…。
行政書士は、遺産分割協議書の作成や相続人調査、遺言書作成支援などでお手伝いできます。
ご家族にとって後悔のない相続となるよう、早めの準備をおすすめします。