こんにちは、行政書士の佐藤です。
今回は「借地権付き不動産」について、成年後見人として実際に直面しているケースを踏まえながら、契約更新や終了時の対応について整理してみます。
借地権付き不動産とは?
借地権付き不動産とは、建物は自己所有であっても、土地は地主から借りているという状態の不動産です。都市部の古い住宅や商店などでは意外に多く、高齢の方の持ち家にも見られます。
このような不動産では、売却や相続時だけでなく、「借地契約の終了時」にも重要な判断が求められます。
借地権の契約期間と更新
借地借家法により、普通借地権の契約期間は以下のように定められています。
《契約期間と更新の流れ》
- 初回契約:30年以上(法律上の最低期間)
- 更新後:20年以上(ただし、10年以上であれば当事者の合意により有効)
- 10年未満の契約期間:たとえ合意しても法律上無効
つまり、借地権の更新時には10年未満の短期契約は認められず、最低でも10年以上が必要です。
実際のケース:更地返還の要求と高額な解体費
私が後見人として関わっている方は、借地上に建てられた戸建てに住んでおられます。建物は本人の所有ですが、土地は個人の地主さんから借りているもの。借地契約の終了が迫ってきた段階で、地主から「更地で返還してほしい」と要望されました。
しかし、建物の解体には100万円以上の費用がかかる見込みです。本人の資産状況からすると、これは非常に重い負担であり、後見人としても慎重に対応する必要があります。
契約終了時に考えられる選択肢
このような場合、次のような選択肢を検討することが可能です。
【選択肢1】現状有姿返還を交渉する
地主と交渉し、建物を解体せずそのまま返還する方法です。費用の負担を回避できる現実的な選択肢です。
【選択肢2】借地権付きで第三者に譲渡する
地主の承諾を得て、借地権付き建物として第三者に売却する方法です。売却益から処理費用を賄える可能性があります。
【選択肢3】契約更新を申し入れる
更新料を支払い、10年または20年の更新契約を結ぶことで、すぐに解体しなくて済むようにします。
【選択肢4】家庭裁判所に処分許可を申し立てる(後見人の場合)
本人の財産処分については家庭裁判所の許可が必要な場合もあります。法的な正当性を担保する手段です。
後見人の立場での判断の難しさ
成年後見人としては、本人の利益を守るだけでなく、法的にも適正な判断を行う責任があります。解体する・しない、売却する・更新するなどの判断は、本人の財産状況、体調、今後の生活設計などを総合的に考えたうえで、家庭裁判所の助言・許可を得ながら進めることが望まれます。
まとめ
借地権付き不動産は、契約満了という「終わり方」が非常に重要です。地主の要望、本人の経済状況、後見人の判断、そして裁判所の許可と、関係する要素が多くあります。
不安な場合は、借地借家法や後見制度に詳しい行政書士・司法書士・弁護士等に早めにご相談いただくことをおすすめします。

