1.生前贈与とは?

**生前贈与(せいぜんぞうよ)**とは、自分が亡くなる前に、家族や大切な人に財産をプレゼントすることです。
「遺産を残す」前に、「今、渡したい」という想いをかたちにする方法です。

具体例:

  • お孫さんの進学資金を援助する
  • 子どもに住宅購入の頭金を渡す
  • 夫婦間で老後資金を移しておく など

2.生前贈与のやり方

贈与は「ただ渡す」だけではなく、ルールに沿った手続きが必要です。

基本的なステップ:

ステップ内容
① 贈与する財産の決定金銭・不動産・株式・車など何を渡すか決めます
② 贈与契約書の作成書面での記録が望ましく、証拠として重要です
③ 登記や名義変更(必要に応じて)不動産なら登記、預金なら名義変更が必要
④ 贈与税の確認・申告年間110万円以上の贈与には申告が必要です(※)

※贈与税の基礎控除は年間110万円(もらう側1人あたり)

3.生前贈与のメリット

メリット解説
① 相続税対策になる長期間にわたって贈与すれば、相続財産を減らせます
② 自分の意思で分けられる誰に、何を渡すか自由に決められます
③ 今すぐ喜ばれる子どもや孫が必要な時に援助できる
④ 相続争いの防止明確に渡すことでトラブル回避にも

4.生前贈与のデメリット

デメリット解説
① 贈与税が高い場合がある特に多額の贈与には最大55%の贈与税が課されることも
② 7年以内の贈与は相続税に戻される死亡前7年以内の贈与は「相続財産」に加算される点に注意
③ 不公平と感じられる可能性他の相続人とのバランスも意識する必要があります
④ 生活資金を減らすリスク自分の老後資金を圧迫しないよう注意が必要です

5.珍しい(レアな)生前贈与のケース紹介

ケース①:孫への「教育資金贈与信託」

信託銀行などを活用し、最大1,500万円まで非課税で贈与できる制度(一定条件あり)。教育資金の支払いに充てられるため、人気があります。

ケース②:結婚・子育て資金の一括贈与

最大1,000万円まで非課税の特例(現在は制度変更や終了の可能性もあるため、要確認)。結婚費用や不妊治療、出産費用などが対象。

ケース③:法人化して株式を贈与

中小企業の自社株を子に贈与して事業承継するケース。評価方法が複雑で、専門家のサポートが不可欠です。


【まとめ】

生前贈与は、単に「お金を渡す」ことではなく、相手の将来・自分の老後・家族全体の関係性を見据えた選択です。

贈与の額やタイミング、相手との関係性を丁寧に考えることが大切です。
そして、贈与税の申告や贈与契約書の作成には専門家のアドバイスが安心につながります。


📌豆知識:暦年課税と相続時精算課税の違い

制度名内容特徴
暦年課税年間110万円まで非課税毎年コツコツ贈与
相続時精算課税2,500万円まで非課税(ただし相続時にまとめて計算)一気に贈与したい人向け


🧾 持ち戻し期間は3年→7年へ延長!

✅ 持ち戻しとは?

  • 被相続人(贈与した人)が亡くなったとき、過去一定期間に行われた贈与を相続財産に「持ち戻して」相続税を計算します(「生前贈与加算」)。

📅 2023年税制改正の要点

  • 2024年1月1日以降の暦年贈与が対象
  • 持ち戻し期間が従来の「3年以内」→「7年以内」へ延長
  • 段階的移行中
    • ~2026年末までに相続発生 → 持ち戻し期間は従来通り「3年」
    • 2027年~2030年の相続 → 対象贈与は「2024年以降すべて」(3年+延長4年)
    • 2031年以降の相続 → 完全に「7年ルール」適用

💡 4〜7年前の贈与は100万円まで非対象に

  • 2024年以降の贈与で、相続開始前4〜7年分の贈与については、総額100万円までは相続財産に持ち戻さない優遇措置あり


✅ 最新版まとめ表

項目ポイント
持ち戻し期間2024年以降の贈与 → 最大7年(3+延長4年)
課税限度延長4年分は合算で100万円まで非対象
移行スケジュール~2026年:3年/2027〜2030年:段階的/2031年〜:7年

🛠 注意&対策ポイント

  • 相続完結までは贈与履歴の記録(通帳・契約書)を丁寧に残すこと
  • 2024年以降は早めの贈与計画が重要
  • 相続時精算課税や非課税制度(教育・結婚など)との併用を検討
  • 孫への贈与など、法定相続人以外への分配は有効な節税手段